チラリ、横目で十夜の様子を窺うと、十夜はさっきと変わらず不機嫌オーラ丸出しで。


わざと歩くスピードを遅らせ、十夜が隣に並んだのを確認してからそろっと見上げた。


むー。


あからさまに見ているのに、十夜は一向にこっちを向いてくれない。


……やっぱり怒ってるんだ。


このまま無言で歩くのも変だし、話し掛けるしかないよね。


そう思ったあたしは、十夜の服の裾をクイクイッと引っ張り、「十夜、ごめん」と小声で謝った。


「………」

「………」


って無視!?この状況で無視ですか!?


別に無視は慣れてるからいいけどね。

でも、服を引っ張ったこの右手はどうしろと?


裾を引っ張ったものの、何の反応もないからまだそのままで。


無言のまま掴んでいるのも変だし離した方がいいよね。




「何で謝る」


「……へ?」


裾を離そうとした時、突然そう言われて。

思わず素頓狂な声を出してしまった。


ビックリした!

いきなり話かけないでよ!心臓に悪い!


「な、何でって喧嘩したから怒ってるんじゃないの?」


再度十夜を見上げ、恐る恐るそう問いかける。


「……違ぇ」


「えっ、違うの!?」


どういうこと?


「じゃあなんで怒ってんの?」


「……さぁな」


いやいやいや。意味分かんないんですけど。


でもまぁ、怒ってないって言ってるし良いか。