……あ、いた。


首を少しだけ左方に動かすと、視界に入ったのはブランコの柵に腰かけて悠長に煙草をくすぶらせている失礼男の姿。


案外近くにいた事にびっくり。
どれだけ存在感がないんだろう。


さっきとはまるで別人だ。


というか、このエセ野郎が存在感ありすぎなのか。




「ねぇ!アナタはあたしが仲間に入るの嫌でしょ!?」




こちらを見向きもしない失礼男に若干面倒臭いと思いながらもそう問いかける。

まるで断れと言わんばかりの言い方だけど、断って欲しいんだから仕方ない。



「………別に」



だけど、そんな切実な願いは失礼男の素っ気ない一言によって虚しく散っていった。



「………え?」



って、ちょ……!いやいやいや!そこは断ってよ!


アンタなら絶対拒否ってくれると思ったのに!!なんで『…別に』とか言って簡単に許しちゃってんの!?



「ホラ!アイツもああ言ってる事だし、入れって!」



苛立ちと焦りでパニクっているあたしに爆笑男が更に追い討ちをかけるようにそう言い放つ。


その陽気な声がまた腹立たしい。




「だから無理だって言ってるでしょ!?あたしは暴走族になんて入る気ない!

って訳で帰るから。じゃあさようなら」



一方的に会話を終了させ、取り敢えず助けて貰ったお礼をするため軽く頭を下げる。


巻き込まれたのはあたしの方だけど、護ってくれようとしたのもまた事実。


例え関わりたくないからと言っても、そのお礼をせずには帰れない。


お礼をしたら即行帰ってやるけどね。