あ、階段どうしよう。

煌も陽も先行っちゃったし。


何だかんだで、誰かに掴んで貰って下りる事に慣れてしまったあたし。


今ではもう、一人で下りるのが不安だったりする。


特に溜まり場の階段は。



ちょっとだけ……甘えてみようかな?


階段の手前で、前を歩いている十夜の左裾を前みたいにそっと掴んでみた。


本当は腕を掴みたかったんだけど、そんな勇気まだないから。


……って、あ、気付いた?


裾を掴んだ事に気付いた十夜が、裾を見た後あたしをチラッと見た。


やっぱり、駄目だった?


そう思ったけど、意外な事に十夜は何も言わなくて、そのまま並んで階段を下りていく。




乗っていく車は二台共高級車で、一台はいつもの車。


その車の運転手はもちろん壱さんで、もう一台はなんと、車のキーを持った煌だった。


なんでも誕生日が4月3日らしく、誕生日の一ヶ月前から免許を取りに行っていたらしい。


まだそんなに経ってないけど大丈夫なんだろうか……。



壱さんの車にはあたしと十夜。


煌の車には彼方と陽が乗り込んだ。


良かった。煌の運転は怖そうだもん。


これから乗せて貰う機会はあると思うけど、今はまだ遠慮しておこう。まだ死にたくないし。


そう言ったらきっと無理矢理乗せられそうだから口が裂けても言わないけれど。