「あたし、十夜に恋愛感情なんてないよ?」


「ホントに?俺にはあるように見えるけど」


「………」



いやいやいや、そんな壱さん並みのキラキラスマイルで微笑まれても困るんですけど。



「そりゃ好きって聞かれたら好きだよ。だけど、それは恋愛じゃないと思う。


冬吾くんはどこを見てそう思ったの?」



「……んー。結構前から思ってたんだけどね。決定的だと思ったのはこの前の雨の日かな」


「雨の日?」


「そう。二人でバイク乗って帰って来た日」


「……うん」


「その日の凛音ちゃんの様子見て、やっぱり好きなのかなぁって」




冬吾くんにそう言われて、雨の日の事を思い出してみた。



冬吾くんが言ってるのはきっとあの時の事だと思う。


階段で十夜の手を振り払ったこと。


あれは手首を掴まれるとばかり思っていたからビックリしただけで、他に理由なんてない。


……多分。



「あれは……ビックリしただけだし」


「……うーん。凛音ちゃんさ、あの時自分がどんな顔してたか分かる?」



冬吾くんの問い掛けにフルフルと首を横に振る。


それを見た冬吾くんは困ったなとでも言うように微笑んだ。



「顔、真っ赤だったよ?」


「……ビックリしたからでしょ?」


「じゃあなんで帰り、十夜さんの服掴んだの?一人で下りたらよかったのに」


「それは……」



その理由は自分でもよく分かっていない。


だって、気付いた時にはもう十夜の服を掴んでいたから。