「送ってくれてありがとう」

「あぁ」



マンションの前に到着し、いつもの様に十夜に降ろして貰う。


この行為には慣れたけど、さっきの大胆発言のせいか恥ずかしくて十夜と目を合わせられない。



「じゃあ、また明日!」



それだけ言って、逃げる様にくるりと十夜に背を向けた時。


「……っ」



突然、腕を掴まれた。



「……十夜?」



肩越しに振り向くと、何故か十夜があたしをジッと見つめていて。



「十夜?」


「……なんでもねぇ」



掴んでいたあたしの腕をするりと離して、何事も無かったかのようにヘルメットを被る十夜。


その後、十夜は一度もあたしを見ないまま帰っていき、残されたあたしはその場にポツンと突っ立ったまま。



……何だったんだろう。今のは。



「……やっぱり十夜は分かんないや」



結構長い期間十夜と居るけど、未だに十夜の考えてる事がよく分からない。



「あー、もう何も考えたくない!」



これ以上考えると頭がパンクする。


そう思ったあたしは、ワシャワシャと頭を掻いてその場から駆け出した。