「……っ、お前」
「十夜!!」
「……桐谷?」
ボサボサ頭に黒縁眼鏡。
普段の十夜とは似ても似つかないその風貌に中田の顔が訝しげに歪んだ。
「俺が下っ端だと思ったか?」
「……っ、お前……!」
十夜がゆるりと前髪を掻き上げた瞬間、中田の目が最大限に見開かれて。
暗闇から解放された漆黒の瞳は、まるで獰猛な獣の様に真っ直ぐ中田を捉えていた。
「……ハッ。お前だったのかよ」
一時の沈黙を経て洩れる乾いた笑い。
「そりゃアイツ等が敵う訳ねぇか」
息一つ上げていない十夜を見てそう言うも、中田の態度はさっきと全く変わっていない。
目の前に敵の総長が居るっていうのに、なんでそんなに余裕でいられるのだろう。
「……仕方ない。今回は引くか」
「あ?」
「用は済んだ」
薄っぺらい笑顔を貼り付けながらそう言った中田は、空気を読まずにぐるりと首を回した。
この状況であの態度。
中田は一体何をしに此処へ来たのだろう。
まさか、本当にあたしに会いに来たとでも言うの?
……分からない。
中田の意図が全く読めない。


