苛立ちが頂点に達したあたしはナイフの事なんかすっかり忘れ、思いっきり頭を振り上げた。
そして、怒り全てをぶつけるように男を睨みつける。
「あんたねぇ。さっきからゴチャゴチャと煩いんだけど!!こっちが大人しくしてるからって調子に乗らないでよね!!
しかもさっきからなに人の許可なしに触ってんの!?痛いから離してよ!!」
そう叫ぶと、身体を若干左に回し、空いた隙間を利用して思いっきり男に体当たりした。
……って、あれ?
右肩の衝撃に確かな手応えを感じ、一歩足を引く。
ガッチリ固定されていたと思っていたけどそうでもなかったらしく、簡単に振り解けた事に少し驚いた。
男はあたしがこんな事をするとは思っていなかったのか、目を見開いてい驚いている。
女のあたしがこんな風に喧嘩するなんて思ってもいなかったのだろう。
というか、体当たりしたぐらいじゃ喧嘩なんて言えないんだけど。
ってそんな事よりも、どうする?逃げる?
それとも──
そう思った時、男がこっちに向かって一歩足を踏み出した。
まさか女相手に殴ろうとでも言うのだろうか。
「っ、」
どうする、なんて考えている暇なんてなかった。
向かって来る敵に身体が否が応でも反応する。
えぇい、もうどうにでもなれ!!
そう心の中で叫んだ時にはもう、右足が勝手に前へと出ていた。
「ヴッ」


