「……ホラ」
「あ、ありがと」
嫌な顔一つせずあたしをバイクに乗せてくれた十夜にお礼を言って、スタンバイOK。
これが煌だったら嫌味のオンパレードなんだろうな。
「……わっ!」
そんな事を考えていると、不意に引っ張られた両腕。
それと同時にヘルメットに何か当たって。
「顔見えないように隠してろ」
どうやら当たったのは十夜の背中らしく、引っ張られた両腕が十夜の腹部に巻きつけられる。
「離すなよ」
その言葉が放たれたのとバイクが動いたのはほぼ同時で、振り落とされないよう慌てて両腕に力を込めた。
「十夜!コンビ二寄って欲しい!」
急にアイスが食べたくなって、赤信号で止まった時十夜にそうお願いすると、十夜は繁華街の外れにあるコンビニで止まってくれた。
何だかんだ言って優しい十夜。
だってほら、今だってバイクから降ろしてくれてるし。
十夜に想われている女の子羨ましいなって少しだけ羨ましく思った。