「……あれ?」



車がない。


“例の駐車場”に行くと、いつも置いてある場所に車が無くて。


オカシイな、と首を傾げて周囲を見渡す。



陽、駐車場に行けって言ったよね?



不思議に思いながらも取り敢えずそこまで行ってみると。



「え?」



車止めの傍にあったのは、一台の大型バイク。


漆黒のソレは見覚えがあるもので。



確かこれって……。



「とお───」

「オイ!」

「……っ」



……ビックリした。




「……何してるの?そんなとこで」



バイクの向こう側から現れたのはこのバイクの持ち主、十夜で。



「隠れてたんだよ」


「え、隠れてた?」



どうやら十夜さんはかくれんぼをしていたらしい。


小走りで近寄って行くと、何故かむぎゅっと左頬を抓られて。



「お前、名前呼ぼうとしただろ。バレたらどうすんだよ」

「……ごめんなひゃい」



まさかまさかの大魔王十夜様が降臨。



「気をつけろ」

「……はーい」



怖すぎたので素直に返事しておいた。


あたしの為だって分かってるけど、何も頬っぺた抓らなくてもいいじゃない。