「そいつを離せ」
すぐ傍まで近寄ってきた爆笑男がそう言いながらジリジリとこちらへ歩いてくる。
「こっち来んじゃねぇ。コイツ怪我させてぇのか?」
その声と共に耳元で聞こえたのは、カチンという金属音。
聞き覚えのあるその音に眉根を寄せる。
……この音、もしかしてナイフの音?
そう思った時、突然後ろから腕が伸びてきて、避ける暇もなく首に回されたかと思うと、首にひんやりとした冷たい感触が伝わってきた。
それがナイフだという事はすぐに気が付いたけれどどうする事も出来ない。
今にも刺さりそうなその鋭い刃に、久しぶりに危機というものを感じた。
絶体絶命。
正直どうしたらいいの分からない。
どうすればいい?
どうにかしてこの状況から抜け出したいんだけど……。
殴る?
いや、そんな事して噂になったら?
あたしの人生早くもゲームオーバー?
冗談じゃない。
まだまだこれからだって言うのに、何でコイツに邪魔されなきゃなんないんだ。
名前も知らないコイツに邪魔される筋合いなんてない!
沸々と込み上げてくる怒り。
それは、
「女に怪我させたくなかったら近寄るな」
この一言で爆発した。
「ちょっと!」


