「目、泳いでるぞ」
「き、気のせいじゃない?」
とりあえずヘラッと笑ってしらばっくれてみるけど、シラッとした目があたしの様子を窺っていて冷や汗が止まらない。
「……気のせいも何も、今も泳いでますけど?」
「なぬっ!?」
どれだけ正直なんだ、あたしの目は。
「じ、実は……」
これ以上は誤魔化せないと判断したあたしは、覚悟を決めて話すことにした。
「た、体育終わって更衣室から帰る時、転けて水溜まりに落ちちゃった」
エヘッ。と、出来るだけ怒られないように可愛らしく言ってみる。
けど。
「お前は馬鹿か!?その頭は能無しか!?何回同じ事言わせんだよ!下見て歩けっつっただろ!」
「ひぇぇぇぇ!すみませんでした!」
そんなもの、無駄でした。
ソファーから起き上がってツラツラと怒りを並べている煌にひたすら謝り続ける事しか出来ないあたし。
鬼だ。鬼がいる。
ここに鬼がいるよ!
頭に角が見えるよ!
余りにも怖すぎる煌様のその形相に、当たり前だけど太刀打ちなんて出来る訳がなく。
ただ黙って説教を受け入れる。
はぁ。もう嫌だ、この人……。
「………で、誰のTシャツだよ、それ」
落ち着いたのか、ドサッとソファーへ沈んだ煌様。
そして、その足元に正座する可哀想なあたし。
「……同じクラスの男の子です。たまたま会って」
という事にしておこう。
この状況で嘘をつくなんて心臓に毛が生えてるんじゃないのと自分でも思うけど。
これでも必死なんです。
突き飛ばされた事だけは煌達にバレちゃいけないから。


