「や、矢野くん、ありがと。服、借りてよかったの?」


「大丈夫!俺、最初着てたTシャツあるし。それ着替え用に持ってきてて、さっき着たばっかだから綺麗だよ」



そう言って、「ホラ」と持っていた袋からもう一着Tシャツを取り出してみせる矢野くん。



「ありがとう。どうしようかと思ってたんだ。また洗って返すね」


「いつでもいいよ。怪我なくて良かったな」



にっこりと微笑んでくれる矢野くんにつられてあたしも頬を緩める。



矢野くんってよく見たら格好いいよね。


今の笑顔、ちょっとドキッとしちゃった。


それに、矢野くんってすっごくいい人だ。


さっきの事があるから余計心に染みるよ。


ホントびしょ濡れでどうしようかと思っていたから。






その後、矢野くんに保健室まで着いて来て貰い、怪我の手当てをして服を乾かした。


だけど、着ていた制服のシャツは茶色くなってしまっていて、とてもじゃないけど着れそうになくて。



「着て帰っていいよ」

「ありがとう、矢野くん」


矢野くんのその申し出に素直に甘える事にした。





保健室から出る時にはもう、6時間目が終わるどころかホームルームが終わる時間になっていて。


「ごめんね、妃奈。遅くなっちゃった。先に帰ってて!ごめんね」


慌てて妃奈に電話して先に帰って貰った。