「転けたの!?怪我は!?怪我はない!?」
焦った顔であたしの身体に視線を這わせる矢野くんに両手を左右に激しく振って、
「大丈夫!矢野くんこそどうしたの?」
逆にそう問いかけた。
「俺は東條さんが気になって今から保健室行こうと思ってたんだ。体操服のままだとあれかなって思って先に着替えに行こうと思ってたんだけど……って………っ、」
「──えっ!?矢野君!?」
喋ってた矢野君が何故か突然着ていたTシャツを脱ぎ出して、しかも、脱いだばかりのそれをあたしに差し出してきた。
「えっ!?えっ!?」
差し出されたTシャツを反射的に受け取ったものの、このTシャツをどうしたらいいのか分からなくて。
え?なに?このTシャツどうしたらいいの?
「えっと……矢野くん?」
Tシャツを握りしめたまま矢野くんに近付いて、そっと顔を覗き込んでみる。
だけど、矢野くんは顔を背けて目を合わせてくれない。
「矢───」
「東條さん、いいから早くそれ着て!…その………透けてるから……」
「へ?」
透け?……あ。
矢野くんのその言葉にパッと自分の胸元を見ると。
嘘!!
矢野くんの言う通り、うっすらと下着が透けていた。
「あ、ありがとう」
急に恥ずかしくなって、くるりと矢野くんい背を向けて急いでTシャツに手を通す。
……わっ。おっきい。
矢野くんのTシャツはお尻まで隠れるぐらい大きくて、なんだか意味も無く照れてしまった。