「陽、今日は早いね。どうしたの?」
いつもは遅刻なのに。
「俺、今日から凛音のエスコート役なの」
「へ?エスコート役?」
「そ。門から教室までのね。まっ、主には階段?」
階段を指差しながら、にやりと含み笑いをする陽。
「も、もう!大丈夫だって!」
そんな陽の肩をバシバシ叩いて追いかけ回す。
「イテッ!暴力反対!」
「知らないっ!」
大袈裟に痛がってみせる割にはさっきと変わらずニヤけ顔。
面白がられているのは一目瞭然で。
このまま許してしまうのは何だか負けた気がするから、フンッと顔を背けて先に階段を駆け上がった。
「お、おい!マジで落ちんなよ!?」
突然走り出したあたしを見て、焦り声で追いかけてくる陽。
「ホラ!大丈夫でしょ!!」
階段を駆け上がり、二階に着いた所でえっへんと振り返れば、陽は憔悴しきった顔であたしを見ていた。
何よ。そんな顔しなくてもいいじゃない。
心配しすぎなんだってば!
「あ──」
陽、と言おうとした時だった。
突然、聞こえてきたのは、キャーという女の子の黄色い声。
「な、なに!?」


