朝から嫌なモノを見たと落ち込んでいたけど、壱さんの笑顔を拝めたから良かった。


ホント、壱さん様々だ。




「……で、お前は昨日何であんなとこにいたんだよ」


「そ、それは昨日言ったじゃない。家族でご飯食べに来てたって」


「本当か?」


「ホントだよ!電話かかってきたでしょ!?」



目の前で聞いてたくせに!



「煌、それはもういいだろ?」


「……まぁそうだな。それはいいか」



え、何。その意味深な言葉は。



「今日から送り迎えしてやる」


「…………は?」



さらりとそう言って退けたのは助手席にいる煌ではなく隣に鎮座している総長様で。



「……え、今なんて?」



聞き間違いかと思って再度聞き直してみた。



「お前、耳悪ぃのかよ。送り迎えしてやるっつってんだよ」



答えたのは十夜ではなく煌で。

馬鹿にしたような言い方に少しムカッときたけど、あたしはそれどころじゃない。


「え、送り迎え?なんで?」



なんでそうなったのか意味が分からないんですけど。



「何でって、ったりめぇだろうが。お前一人にしておくと何しでかすか分かんねぇし」


「はぁ?そんな理由?」


「何がそんな理由?だよ!立派な理由だっつーの!」


「ったぁーい!何すんのよ馬鹿煌!!」




器用に腕を伸ばしてきた煌があたしの頬を思いっきり抓ってきた。


チッ。逃げ遅れた。くそぅ。



「煌、やめろって!……っていうか、ちゃんとした理由教えてあげなよ」

「ちゃんとした理由?」



そんなのあるの?



バックミラー越しに壱さんを見れば、同じくバックミラーを越しにあたしを見た壱さん。



「あのね……」


それから、壱さんは送り迎えする事になった経緯をあたしに分かりやすく説明してくれた。