貴兄の馬鹿野郎ー!なんでこんなタイミングに電話なんかしてくんのよ!!



「電話鳴ってるけど」


「まままママからだ!」



そう言って、もうどうにでもなれ!と半ばヤケクソ気味に通話ボタンをスライドさせれば、



『凛音?お前今何処にいんだよ?』



通話口から貴兄の怪訝な声が聞こえてきた。



「ご、ごめんね!友達と会ってドラッグストアから出たの!すぐ行くからそこで待ってて!」

『は?友達?って、ちょ、凛音!?』



用件だけ伝えてすぐに切ったあたしは、ポケットに突っ込んで再度十夜達を見る。



「嘘じゃねぇみたいだな」


「う、嘘じゃないし!」



腕組みをした煌があたしを窺うようにジッと見据えてきて、それにサッと身構えて睨み返す。



「……十夜、どうする?」



睨み合ったまま十夜にそう問いかける煌。



「取り敢えず、家族いるんだったら今日は帰らせる」


「……了解。じゃあ行くぞ」


「は!?」



行くぞって何処に!?



乱暴にあたしの腕を掴んで歩き出す煌に慌てて「何処へ行くの?」と聞くと、「家族のとこまで送る」と言われた。



じょ、冗談じゃない!


そんな事してもし貴兄達と会ったりでもしたら……。


またしても蘇る地獄絵図。


十夜なら未だしも、貴兄と煌だなんて……。


……考えただけでも恐ろしい。



「大丈夫だから!!じゃあまたね!!」


「ちょ、オイッ!」


煌の腕を勢いよく振り払って、一目散にその場から駆け出した。