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「ふぃー。食った食ったー」
「……凛音、オッサンみてぇな事すんじゃねぇよ」
「む。オッサンで結構ですー」
冷めた目であたしを一瞥しにくる優音にあっかんべ-をして、さっきよりも大袈裟にお腹を叩いて見せる。
それを見た優音が更に顔をしかめたけどそんな事知ーらない。
オッサンでもなんでも好きに呼んでくれ。
あたしはこの満たされた満足感をさらけ出したい気分なんだから。
……それにしても、あの焼肉屋さん美味しかったなぁ。
あたしの美味しい店ランキングの五位に認定してあげようかな。
たらふく食べた焼き肉を思い出しながら、人の多い大通りを横断する。
その時、視界に入ったドラッグストアを見てある事を思い出した。
「ねぇねぇ、貴兄達今日泊まってくの?」
肝心な事を聞いてなかった。
泊まるのなら二人の歯ブラシとか買わなきゃいけないし。
引っ越したばかりだからそういうの全然揃えてないんだよね。
「あー、泊まりてぇけど明日学校だから無理だな」
「あ、明日学校か」
忘れてた。
まだまだ春休み気分が抜け切っていないのか、学校の事をすっかり忘れていた。
泊まっていくものだと思っていただけに、落ち込みようが半端ない。
「また近々来るからそんなに落ち込むなよ」
「……うん。待ってる」
「よし」
「……あ、じゃあさ、その時の為に日用品買って行こうよ!」
ね?、と近くにあったドラッグストアを指差すと、貴兄は「仕方ねぇな」と言ってあたしの頭をくしゃりと撫でた。


