「へ?」
「あそこにいる五人には絶対に近付くな」
コクリと頷き合った二人が真剣な顔であたしを見たかと思ったら、貴兄の口からとんでもない一言が放たれた。
「……は?」
あそこ、と言って貴兄が指差したのは、たった今貴兄の背後を過ぎ去っていった鳳皇の幹部達で。
彼等の背中を見た瞬間、あたしは驚きと動揺のあまり息をする事を忘れてしまった。
「あの五人は“鳳皇”っていう暴走族だ」
「………」
「アイツ等はそこら辺の雑魚とは違うこの県のトップに君臨する絶対的王者」
「………」
「その幹部達はお前の通う高校にいる」
「えっ!?」
「……その様子じゃ知らなかったようだな」
「………」
驚くあたしを見て貴兄は安堵の溜め息を吐いているけど、あたしが驚いたのは鳳皇を知らなかったからじゃない。
あたしの通うの学校に鳳皇の幹部がいると貴兄が知っていたから。
「あ、あの人達うちの学校にいるの?」
まさか貴兄が知っていたなんて思いもしなかった。
同じ世界にいるとそこまで情報が回るの?
「そうだ。だから俺はお前をあの学校に行かせたくなかった」
「……っ」
──そういう事、だったんだ。
その言葉を聞いた瞬間、なんで貴兄達があんなにも反対していたのかを理解した。
「凛音、アイツ等には絶対に近付くなよ」
──全部、鳳皇がいたせいだったんだ。


