「……なに?」
意味が分かんないんですけど。
貴兄だけなら未だしも、優音までコワイ顔してるし。
一体何なの!?
「ねぇ、貴に──」
どうしたの?
そう問いかけようとした時だった。
「……っ!」
ちょうど貴兄の真後ろ。
今抜け出してきたばかりの人波で、見てはいけないモノを見てしまった。
否、見てはいけない“人達”と言った方が正しいかもしれない。
……う、嘘でしょ!?
──それは、あたしが今、一番会いたくない人達で。
……というよりも、会ってはいけない男達だ。
あ、有り得ないんですけど!!
なんで十夜達が此処にいるの!?
やややヤバイッ!!
見つかったら怒られる!!
「凛音?」
「……はい」
しかも、此処には貴兄と優音もいるし。
……ヤバイ。ヤバすぎる。
本気でヤバイ。
だって、鳳皇幹部と獅鷹総長だよ?
こんな所で鉢合わせしたら駄目でしょ!!
「──お前、顔色悪くねぇか?」
「そ、そうかな!?ちょっとね、お腹空きすぎて気持ち悪くなってきちゃって!」
なんとも言えない微妙な返答。
あたしにしては上手な返しだと思うんだけど。
っていうかそれよりも。
この空気を変えなければあたしの身が持たない。
「た、貴兄こそ急にどうしたの?向こう気にしてるけど何かあるの?」
……そう思って話題を変えたのに。
「凛音は無鉄砲っていうか何しでかすか分かんねぇから言っておくか」


