「貴、優、先行くからね!」
立ち読みしてる二人にそう吐き捨てて、目的地である焼肉屋へと先に向かう。
「凛音、待て。一人で行くなって」
「知らなーい」
二人で仲良く立ち読みしてれば?
一人で美味しお肉たべちゃうもんね!
駆け寄ってくる二人にあっかんべーをして、フンッとそっぽを向く。
「りーのちゃん。機嫌直せって。見られることなんか慣れてるだろ?」
あたしの肩を組みながら猫撫で声でそう言ってくる貴兄に反省の色はなく。
「人前でしないでって言ってるでしょ!」
ムカついたからぎゅむっと手の甲を抓ってやった。
っていうか、慣れる訳ないっつーの!!
芸能人じゃあるまいし!
周囲から上がる黄色い歓声と熱い視線。
こんなものどうやって慣れろって言うのよ。
……あー、イケメンの兄弟を持つとホント疲れる。
どうせ変装するなら、もっともっさい感じにしてきてよね。
せめて眼鏡かけてその麗しいお顔を隠すとかさ。
「──凛音、待て」
「……っ、ちょ、なに!?」
今、人前でしないでって言ったばかりなのに!
「貴──」
「いいから」
そう言って強引にあたしの腕を引いた貴兄は人波から外れ、細道に入って身を隠すように立ち止まった。


