「凛音、他に何かなかったか?」
「他に?」
なにかあったっけ?
思い当たることがなくて、コテンと首を傾げる。
「無かったらいいんだ」
うーん、と本気で考え込むあたしを見て、貴兄が苦笑いしながら頭を撫でてきた。
「相変わらず分かりやすい奴」
「……む」
ぽそっと聞こえた優音の声に振り向けば、何故かそっぽを向いている優音がいて。
「うりゃ」
「……っ、おま、」
ムカついたから優音の膝の上に飛び移ってやった。
「優音くーん、凛音ちゃんと勝負する?」
「何の勝負だよ」
「モチ、マリオカート!」
「受けて立つ」
「フンッ。余裕かましていられるのは今の内だけなんだからね。あたし、この二週間でかなり強くなったんだから!」
入学式前、家で引きこもってたあの魔の一週間。
そして、外出禁止令が出た昨日。
あたしは、実家から持ってきたマリオカートを朝から晩までやっていた。
そのお陰なのかかなり上達したのだ。
実家にいる時は優音とどっこいどっこいだったけど、あの一週間のお陰で確実に優音より強くなった(ハズ)。
「ふーん、望むところだし」
「オイ!兄ちゃんを除け者にすんな」
「もう、分かってるって!貴兄も相手してあげるから」
「……貴兄、強いから嫌なんだよな」
仲間外れにされてプリプリ怒っている貴兄に不満げな視線を送る優音。
確かに優音の言う通り、貴兄はこの中で一番強い。あたしと優音はどっこいどっこいだけど、貴兄には勝てないもんね。
でも。
「今日は貴兄に勝てる気がする!ってか、勝つ!!」
気合いを込めて握り拳を天井へと突き上げれば、貴兄が「望むところだ」と不敵に笑った。


