「ちょ、待っ……!!」


突然の事に対処しきれなかったあたしは、何もない平らな地面で躓いてしまった。


そんなあたしを間一髪のところで受け止めてくれたのは良いんだけど。



「いたっ!」


運が悪いことに、回された十夜の手が思いっきり強打した背中に当たった。



や、ヤバイ!バレる!



「と、十夜がいきなり押すから!」



咄嗟に飛び出した言葉は何とも微妙な言葉で。



「お前……」



振り向いた十夜が怪訝そうな表情であたしを見下ろしたけど、そっぽを向いて知らん振り。

何処を見ていいのか分からない視線はスゥーと宙を彷徨っていく。



「来い」

「……へ?」



ちょっとまた!?


とぼけているあたしにまたもや伸ばされた手。

ガッチリと掴まれ、そのまま何処かへと連れて行かれる。


大股で歩いていく十夜をチラリ見上げてみると、何故か眉間に深く刻まれた縦皺が一本。


ちょ、何?何なの!?なんで怒ってんの!?


疑問をぶつける暇もなく、十夜が特等席の後ろにある扉を乱暴に開けた。



「ちょ、十夜!あたしソファーで寝たいんだけど!」



ちょ、ホントにどこ行くの!?



「………」


十夜はあたしの言葉なんて軽く無視して、そのまま部屋の中へと連れて行く。


部屋の真ん中まで来ると十夜はピタッと立ち止まり、前屈みになって何かを掴んだ。

途端、パッと明るくなった室内。


どうやら十夜が掴んだのはリモコンだったらしい。