「こ、煌!何やってんだよ!凛音ちゃん痛がってるだろ!?止めろって!」
グリグリとゲンコツで圧迫しにくる爆笑男を壱さんが必死になって止めに来てくれて無事脱出成功。
っていうか、
「何すんのよ!」
乙女になんてことすんの!?
もう少しでまた乙女らしからぬ声を上げるとこだったじゃない!
「お前の顔が自棄にムカついたら」
「はぁ!?」
自棄にムカついただと!?
「あ~ん~た~ね~」
「だから、“アンタ”じゃねぇっつーの。俺には“煌”様っていう格好良い名前があんだよ」
「……コウ?」
そう言えばさっきそんな事言ってたような……。
「楠木 煌(クスノキ コウ)。それが俺の名前」
「くすのき、こう」
「格好良いだろ?」
「字は?」
「煌めくの“きら”で“こう”」
「うわっ、」
名前までホスト臭い。
「テメェ、うわって何だよ、うわって」
「いや、何でも?」
これ以上何か言おうもんなら絶対また何かされる。
そう思ったあたしは、お口を完全にチャックした。
ついでに話も逸らす。
「貴方は?」
高級椅子に深く腰掛け、煙草を燻らせている総長様に向かってそう問い掛ければ、天井に向けられていた視線がゆっくりと此方へ落ちてきた。
「桐谷 十夜(キリタニ トオヤ)」
……キリタニ、トオヤ。
抑揚のない言葉と変化のない表情。
それでも、あたしを見据える漆黒の瞳だけはキラキラと眩しい程に光を放っていた。
曇りのない艶のある黒。
それは“漆黒”と呼ばれるに相応しい色。


