「………」
右頬に残る生暖かい感触。
「……う」
「ん?」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
数秒間フリーズした後、我に返ったあたしは女のモノとは思えない程凄まじい大絶叫を披露した。
「り、凛音ちゃん!コレ濡れティッシュ!」
「凛音顔貸せ!!」
壱さんに手を引かれ、ソファーへ舞い戻ったあたしは放心状態。
そんなあたしの右頬を濡れティッシュで優しく拭いてくれる壱さんと陽。
「……お前等、人をばい菌扱いすんじゃねぇよ!」
当然、そんなあたし達を見て不満げに顔を顰める彼方さん。
いや、もうご丁寧に“さん”付けなんてしてやんない。
人様の頬に勝手にキスする不届き者は呼び捨てにしてやる。
「彼方、半径一メートル以内に近付くの禁止!」
フイッと顔を逸らしてそう言うと、
「り、りっちゃん……!」
何故かキラキラと瞳を輝かせる変態彼方。
……あたし、そんな目で見られるような事言ってないんですけど。
「……なに?」
「もう一回呼んで!」
「はぁぁぁ?」
ズイッと近付いてくる彼方から思わず遠ざかり、怪訝に顔を歪ませるあたし。
だって、彼方の言ってる意味が全く分からない。
「名前!」
「名前?」
あぁ、そういう意味か。やっと分かった。
「彼方」
抑揚のない声でさらりとそう言い放つと、
「良いっ!呼び捨て最高!」
変態彼方は拳を振り上げて喜んだ。


