「……は?」
表情を変える事なくそう言い放った男に目が点になった。
……どっか、行け?
今、どっか行けって言った?
っていうか、『消えろ』の次はどっか行け!?
なにそれ。
ふざけんな。アンタ何様?
何であたしが指図されなきゃいけない訳?
あーもう頭きたっ!
「アンタねぇ……!!」
「ちょーっと待った!!」
あたしの言葉をさえぎって、いきなりあたしと失礼男の間に割り込んで来たのはさっき爆笑していた男。
あたしに向かって突き出しているその右手は、どこからどう見ても“待った”の合図で、グッと言葉が詰まる。
止まったあたしを見て満足げに数回うなづいた爆笑男は、そのポーズのままこっちに向かって歩いてきた。
薄暗がりの中、少しずつゆっくりと近付いて来る爆笑男。
徐々にあらわになっていくその姿に思わず眉を引き寄せた。
近付いて来て分かった事が一つある。
この男もまた失礼男と同様、相当な美形だということ。
けれど、失礼男と違うのはその身にまとう雰囲気だった。
雰囲気だけで言うと、どちらかと言えば貴兄に近いと思う。
明るいベージュの髪の毛は上部だけルーズに束ねられ、両方の耳には幾つものピアス。
長めの髪はこの男が持つ雰囲気によく合っていた。
一言で言うならば、ホストみたいな王子。
エセ王子?
意味不明だけど一番当てはまる例えだと思う。


