マズイ、と思ったあたしは直ぐ様フォローした。
「無い無い無い無い!ホラ、あたし怖いもの知らずだから!」
そう言って両手を左右に振ると、
「……だよな。お前、俺等と関わるの嫌がってたもんな。んな訳ねぇか」
フッと溜め息混じりに笑った爆笑男。
馬鹿にする様な笑い方に少しムカついたが、誤魔化せたみたいだからまぁ目を瞑ろう。
っていうかホント危なかった。
もう少しで暴走族と関わっている事がバレるところだったよ。
バレても問題ないのかもしれないけど、これ以上ややこしくなるのだけは避けたい。
それに、中田の件が終わったらこの人達とも切れるんだ。
そんな人達にわざわざ貴兄の事を言う必要はないと思う。
それにしても。
“この空気”、懐かしいな……。
視界に広がる光景。
それは普段、一般人が見る事はないであろう景色があった。
此処は所謂“倉庫”という建物で、外観は古くもなく新しくもなく。
けれど、中は外観の割りに綺麗だった。
バイクやらその部品やらはその辺に転がっているが、ゴミは一つも落ちていない。
どうやら此処の不良さん達は綺麗好きらしい。
倉庫の一階は何も無く、広さは学校の体育館の二分の一程度。
入り口から見て右側、そこには三つの扉があり、その上にはオープンになった廊下があった。
そして、廊下の真ん中には五人は並べそうなぐらい横幅の広い階段。
二階の廊下から真っ直ぐ一階に伸びたその階段はまるで宮殿にある階段のようだ。
失礼男がその階段を上がっていくところを見ると、どうやら目的地は二階にあるらしい。