中田を見下ろしながらそう言った後、あたしは踵を返して走り出した。
「オイ!そいつを止めろ!!」
直ぐ様下っ端に命令する中田。
だが、遅い。
「凛音!!」
中田が命じた時にはもうあたしはすぐ近くまで来ていた陽に手を引かれ、背中に隠されていた。
陽の左右に王子様とフェロモン男が並び、中田を威嚇する。
それを見た中田はチッと悔しげに舌打ちをすると、
「……東條 凛音、鳳皇を潰すついでに手に入れてやる」
そう吐き捨て、その場から逃げ出した。
「待てよ!」
中田の後を陽やフェロモン男が追う。
だが、裏門に待機していた車に逃げ込まれ、呆気なく逃げられてしまった。
「はぁ……」
黒塗りのバンが視界から消えたのと同時に吐き出される安堵の溜め息。
逃げられた事に悔しさを感じながらも、中田が居なくなった事に安堵した。
「──オイ、怪我は?」
「……え?怪我?」
いつの間に隣へ来たのだろう。
振り向くと、すぐ近くに失礼男が居て、相変わらずの無表情であたしを見下ろしていた。
「……怪我は、ない」
それよりも疲れた。
「無茶するな」
「……そんな事言われても仕方ないじゃない。アイツの所なんて絶対行きたくなかったんだもん」
さっきよりも幾分か優しい声色。
どうやら心配してくれているらしい。