よほど慌てているのか、妖たちは口々にまくし立てるように騒ぐ。
そのせいで要領を得ず、なにが起こっているのか理解できない。
山吹は「とにかく落ち着け!」と声を張り上げ、諌めようと躍起になっている。
揉め事だろうか。
この屋敷――千鬼を訪ねてくる理由はほとんどがそれだ。
間に入ってほしいだとか、暴れている妖を抑えてほしいだとか、そういう類のことばかりだ。
しかし千鬼は出払ってしまっている。
いつ頃戻るのか見当もつかない。
だが、あの慌てようだと火急の要件だろう。
「オレが行くから、少し待っていてくれ」
山吹は騒ぐ妖たちを門の外で押しとどめ、玄関へ戻るのが見えた。
町に住む妖でさえ、結界に阻まれて千鬼の屋敷に足を踏み入れることは叶わない。
千鬼が許したものたち、つまり千鬼自身と山吹、それに柊と嵐、そして恵都のみがそれにあたる。
結界というものに恵都は馴染みがなかった。
そのせいで理解するのに時間がかかったが、子供の頃にした遊びのバリアとか安全地帯だと思えば納得できた。
そういう感じ?と千鬼に聞いたら、もっと複雑だが間違いではないと肯定してくれた。
