「恵都ちゃん、無理に言わなくてもいいんだよ」
山吹は気をつかってくれるが、恵都は続ける。
辛いからといって、ここで止まってはいけない。
それでは人間界での失敗を繰り返すだけだ。
この世界で生きると決めたのを逃げとするのか、それとも新たな道とするのかを決めるのはこれからの恵都自身だ。
千鬼のくれた選択肢を、恵都は逃げとしたくなかった。
「家や学校での問題をどうすれば解決できるのか、私には分からなかった。だからなにもしなかったし、言わなかった」
指先が冷える。
恵都には自信がない。
全然違う話だし、あの時に戻ったとしても、勇気が出るのかは疑問だ。
「でも、分からないなら分からないって言えばよかったのかもしれない。じゃあどうすればいいの?って聞いてみたらよかったのかもしれない」
そんなことで解決したとは到底思えない。
あの悪意のある笑みがどうにかなるわけがない。
けれど、なにか変ったかもしれないのだ。
「だからこの世界では素直に言ってみようと思うの」
