千鬼は変化さえしなければ、見た目は人間と変わらない。
山吹がどんな妖なのか恵都は知らないが、彼も人間との違いは見つからない。
「オレの隣から離れるな。歯向かってくるようなものはまずいないが、人間を見ると見境のなくなる妖もいる」
千鬼はいつもの調子でそう言って、恵都を置き去りに玄関へ向かう。
「大丈夫だって。なにかあったとしても、千鬼に勝てる奴なんていないから」
笑顔のままの山吹が千鬼が山吹に続いて、恵都は慌てて二人の後を追った。
死にたいとは思う。
けれど、酷い目には遭いたくない。
――それに、どうせだったら千鬼に食べてほしい。
玄関で草履を履き、千鬼と山吹はそれぞれ面頬を付けた。
面頬とは顔面を覆う防具だ。
千鬼の面頬は鼻から下のみ、薄い金属で作られた鬼の面を模したものだ。
逆に山吹は鼻よりも上のみで、白地に赤の模様が鮮やかだ。
千鬼は戦国武将のものに近いが、山吹は上半分のみの狐のお面といった方が近い。
