天翔ける君




続いて千鬼の私室から出てきた山吹も同じような格好をしていた。
ただし籠手は弓籠手で、弓と矢筒の他に刀まで差している。

「町に行くだけだよね?ちょっと大げさじゃない?」

あぁ、と山吹は頷く。

「恵都ちゃんの町は平和だったんだよね?こっちは治安が悪いからなぁ」

完全武装の山吹はのんきな微笑みを浮かべるが、恵都は少し恐ろしくなった。


ここは人間の生きられる世界ではない。

妖の跋扈する世界だ。
彼らは時折人間界に現れ、人間を食う。
さらにはこちら側に攫ってきて売ることもあるという。

それを裁くものはない。
そもそも禁止されていないし、妖同士の殺し合いですら咎めるものはいない。

感情に任せて他者を殺し、己の利益のために平気で血を浴びる。
人間よりも感情の起伏が激しく、理性に乏しい。
そうでない妖も多いと聞いているが、そういう妖もいるのが事実だ。

そういう種族なのだ、と千鬼が言っていたのを覚えている。
だから屋敷の外へ逃げようなどと思うな、と。