寝坊して夕食作りを手伝えなかった恵都は洗い物をひとりでするとかってでた。
もちろん水道なんて便利なものはなくて、水は井戸から汲まなければならない。
でもそれは山吹がやってくれるから、恵都は水瓶からすくうだけでよかった。
人間界にいた頃は蛇口をひねるだけでよくて、恵都は水が出ることを誰にも感謝
しなかった。
けれどこの屋敷に水があるのは山吹が井戸から汲んでおいてくれるおかげだ。
ご飯だって千鬼と山吹がいなければ食べられない。
恵都は二人に感謝している。
死んでしまいたいと思っているのにおかしな話かもしれないけれど。
後片付けを終えた恵都は千鬼の私室を訪ねた。
「あの」
襖越しに声をかけると、
「少し待て」
と千鬼のそっけない返事が返ってくる。
さっきは怒っていたのだろうかと思うと、少し気まずい。
千鬼はきっと、なんとも思っていないのだろうけど。
少しして襖を開けた千鬼の格好は、いつもの着流しとは違っていた。
