天翔ける君




涙を拭われて、恵都は自分が泣いていることに気づいた。
優しく丁寧なその手つきに、千鬼が爪まで変化するのだと初めて知った。


千鬼は優しい。
怪我の手当てをしてくれたのは山吹ではなく千鬼だ。
蝋燭だって、町まで買いに行ってくれたのは山吹だが、そのように言ってくれたのは千鬼だ。

涙が溢れて止まらない。
――優しくされたら、止まらない。

抱き起されて、恵都はそのまま抱きすくめられた。
ぎゅっと苦しいくらいに力を込められる。

千鬼の温かな体温に恵都の心は少しだけ溶けた気がした。



「……一年くらい前にね、お母さんが死んじゃったの」

小さい子にするみたいに、千鬼が背中を撫でてくれる。

それに促されるように、恵都はぽつぽつと話し始めた。