――それなのに、いったいどうして?
山吹は好きだと言ってくれた。
いったいどこが、と不思議だが、助けてくれる理由にはなる。
恵都だって、千鬼が臥している今、どうにかして助けたいと思っているのだから。
分からないのは千鬼だ。
仲間として扱うと言ってくれたことがあるが、だからといって自らの腹に刀を突き立ててまでとは思わなかった。
会って一年にも満たない、恵都はただの人間だ。
刀を腹に沈める千鬼には躊躇いがなかった。
本当に死ぬ気のように見えた。
夜鬼を油断させるためだとか、そういうのではなかった。
恵都は布団に寝かされた千鬼の側に移動した。
寝顔は穏やかとは言えず、やはり呼吸は浅く弱々しい。
恵都は千鬼の額に当てられた手拭いを桶の水に浸した。
幾分か冷えたそれを絞り、元の位置に戻す。
千鬼は変化しているわけでもないのに、額が熱い。
せめて氷でもあればもっと楽にしてあげられるかもしれないのに、と恵都は奥歯を噛みしめた。
――ほら、なんの役にも立たない。
