天翔ける君






およそ半月ぶりに入った千鬼の部屋は、特に変わったところがなかった。
相変わらず簡素で、がらんとしている。

けれど、すみの方にはうっすらと埃がたまっていた。

千鬼の部屋は毎日山吹が掃除している。
恵都の知る限り、一日も欠かしたことがないはずだ。

きっと自分たちの生活など顧みず、恵都を探してくれていたのだろう。

嬉しいし、すごくありがたいことだ。
胸が温かくなって、なんて幸せものなのだろうと思う。

しかしその反面、どうしてそこまでしてくれるのか分からない。

この妖の世界にきて、恵都はますます役立たずだ。
もとの世界でなにか役に立っていたのかと問われれば、家でも学校でもむしろ邪魔だったように思う。

けれど、この世界にきてからは、ひとりで外に出ることすらできない。
結界の中で守ってもらわなければ、ただの食糧だ。

せいぜい恵都にできるのは家事の手伝いくらいで、それで自分の食べる分をまかなえるような貢献ができているのかといえば、自信がない。

物価だって知らないし、ただ千鬼と山吹の厚意に甘えていただけのような気がする。