天翔ける君






千鬼が死んでしまうかもしれない。

どうしよう、どうしよう、と恵都の思考は堂々巡りを繰り返す。
指の先が冷たくて、もう感覚がない。

恵都は母の葬式を思い出した。

生気のない白い顔。
温もりのない体。
誰かのすすり泣く声と、恵都自身の頬を伝う涙の温かさ。

花を添えた時、取り乱しそうなのを堪えた絶望感。
母が骨だけになるのを待つ間の、あの虚無感。

まるで肺に穴でも開いているかのように呼吸がしづらい。

――今度は千鬼がいなくなってしまうの?



どれくらいの時間を翔けてきたのか、先頭を行く獣姿の山吹が高度を落とし始めた。
夜鬼の屋敷にきた時とは違い、緩やかに高度を下げていく。

恵都を抱えた黒髪の青年がそれに続いた。
更に最後尾の黄色の髪の少年が続く。

ゆっくりと地上に近づいていく。
大きな町が見え、建物のひとつひとつが輪郭を現した。

恵都は少ししてから、そこがずっと望んでいた千鬼の屋敷だと気づいた。
上から見ると、馴染んだ家屋や庭も少し他人行儀だ。

恵都たちが屋敷に降り立った頃、ちょうど空が白みだした。