「退くぞ!」
山吹が鋭く叫んだ。
懐から札のようなものを取り出して、山吹はそれを夜鬼たちに向かって放つ。
紙でできた札とは思えないほど直線的に飛び、それらは炎に変わって夜鬼たちを拒んだ。
山吹はその隙をついて、巨大な獣の姿へと変化した。
山吹の髪と同じ色の狐だ。
自動車なんかよりも大きい。
山吹だったはずの狐が低くうなり、口から炎を吐いた。
そしてすぐさま器用に千鬼を背に乗せ、宙を駆け上がった。
呆然としている恵都を黒髪の青年が抱きかかえた。
恵都たちが山吹に続いて数メートル空へ上ったのを見計らって、黄色の髪の少年が雷を落とした。
見事な連携で、恵都たちは夜鬼から距離をとることに成功したのだった。
恵都たちは夜空を翔けた。
夜鬼たちが追ってくる気配はなかったが、誰も口をきかなかった。
恵都は黒髪の青年に抱えられているだけでよかった。
季節は初夏だったが、夜――それも上空はそれなりに冷える。
下が見えないほどの上空をすごい速さで移動して、恵都が恐怖を感じないわけではない。
けれど、時折聞こえる千鬼の苦しそうなうめき声の方が恵都には怖かった。
