天翔ける君






代わりに山吹が死んでしまったら、そんなに悲しいことはない。
山吹は恵都にとって大切な存在だ。

だから恵都は涙を引っ込めて、なんとか笑顔を作った。
髪を引っ張られる痛みだって、我慢してみせる。

恵都は四人を見回した。

「助けにきてくれてありがとう。でも、私のために誰かが犠牲になるのは嫌だよ」

頬がピリピリと突っ張る。
まるで自分のものじゃないみたいに、顔の筋肉が言うことを聞かない。

恵都は唾を飲み込んだ。

「私はこっちで暮らすよ。夜鬼には結局酷いこともされなかったしさ。心配いらないよ。だから、だから……」

声がどんどん小さくなって、「さようなら」だけは言えなかった。
空気の塊が喉から吐き出されるだけで、言葉にはならなかった。

「やはりオレを選んだなぁ」

耳元で夜鬼が意地悪く囁いた。

「あとで、先ほどの続きをしよう」

ねっとりと絡みつくようなその言い方に、恵都は吐き気がした。

咄嗟に顔を伏せた。
唇を噛み、千鬼に助けを求めようとするのを必死に堪えた。