すぐそこにずっと会いたいと思っていた千鬼たちがいるのに。
頭を撫でて、よく頑張ったと笑顔を見せてほしいのに。
それなのに、夜鬼に阻まれて叶わない。
「お願い、離して。千鬼と一緒に帰りたい」
夜鬼は恵都の言葉などまったく聞いていない様子で、千鬼に向かって不敵な笑みを浮かべた。
「どうしてもこの人間を帰してほしいのならば、後ろの三人のうちのひとりの命と交換だ」
腰を離す代わりに、夜鬼は恵都の髪を鷲づかみにし、
「千鬼、お前の手で殺せ。――それとも、この人間の痛みに歪む顔がもっと見たいか?」
ぐいっと乱暴に髪を引っ張られた恵都は、少しでも痛みを和らげようと爪先立ちになって夜鬼の手をつかむ。
引っ掻こうが気にも留めていないのか、夜鬼は醜悪な笑顔を崩さない。
「千鬼、オレにしろ」
山吹が千鬼に詰め寄る。
それを見た恵都は慌てて、「待って!」と声を荒げた。
