天翔ける君





「あれらの安否は聞かんのか」

無言のまま食事も終わろうかという頃だった。
夜鬼からの唐突な問いかけに、恵都は一瞬の間を置いた。

あれら、とは随分な言い方だが、千鬼たちのことだろう。

「――あなたが本当のことを言っても、嘘を吐いたとしても、どっちにしても私は信じないから。だから、聞かない」

恵都は軽蔑の眼差しで夜鬼を見やった。

夜鬼は柊と嵐を人質に千鬼を呼び出し、そして卑劣な手段でもって山吹を殺そうとした。
さらには屋敷に侵入し、そこにたまたま想定外の恵都がいたものだから連れ去ったのだ。

夜鬼にとって、恵都にどんな利用価値があるのか、恵都自身には想像もつかない。
だが、夜鬼が卑怯で卑劣な人物だというのははっきりしている。
恵都を騙したり惑わしたりしたとしても、なんら不思議はないのだ。

冷静でいること。
そして、気を確かに持つこと。

連れ去られた恵都が助かるのに、それらは必要不可欠なことだった。