天翔ける君





なんとなく、恵都は空を見上げた。

暗くてなにも見えないだろうと思っていたのに、なにかが落ちてくるのが見えた。

豆粒程度だったそれらは恵都が驚愕に口を開けている間にみるみる大きくなり、すぐに人間――いや、妖だと分かった。
十か二十か、数える暇もなく屋敷目がけて落ちてくる。

恵都はその様子を映画かなにか、とにかく他人事のような気持ちで眺めていた。
なにかが起ころうとしているのに、頭の中の整理が追いつかず、体が動かない。

翼のあるものやそうでないもの、獣や、明らかに異形のものもいる。

まるでスローモーションのように見えているのに、恵都はなにも考えられなかった。
ただ茫然とそれを眺める。

――そうだ、結界があるから大丈夫だ。

やっとそこに思い至った時だった。


一番に落下してくる妖が腰の刀を引き抜いた。
空中でしゃがみ、なにもないはずの足元にそれを突き立てる。
一瞬、その妖が空中で静止したように見えた。

刀から、放射状にバチバチと小さな稲光のようなものが走った。