天翔ける君





山吹を送り出すと、恵都は屋敷にひとりきりになった。

相変わらず降り続ける雨の音だけが響く。

暗闇に蝋燭の頼りない明かりだけで、恵都は途端に怖くなった。
暗いのには慣れたと思っていたが、それはふたりがいたからだと今更気づいた。

屋敷にひとり残されるのは初めてだった。


家事をするにしても手につかないし、夕食をとる気にもならない。
夕食の時間から随分たったが、全然お腹が減る気配がない。
いっそ眠ってしまいたいが、不安と心配で眠れそうもない。

恵都は時間が過ぎるのをそわそわと待った。


真っ暗な室内にいても気が滅入るだけだと思い、恵都は門の見える縁側へと出た。
雨に濡れないぎりぎりのところまで庭に近づく。

ここならば、ふたりが帰ってきた時に真っ先に気づける。

雨と土の湿った匂いがする。
空は月も星も雲に覆い隠されていた。

蝋燭の明かりだけが頼りで、恵都は心もとなさに膝を抱えた。