ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして

「へぇ、女の子的にはそういう意見なんだ?」
「そうですよぅ。“優しいだけじゃダメ”っていうのは、優しさあってこそのものですから!」

女性陣の頷きたるや。

「なるほどねー」
きゃいきゃいと盛り上がる。
そして話は逸れて膨らみ、また私は傍観を決め込む。
稔兄ちゃんは適当に相づちをうったり、場の雰囲気をそこなうことなく立ち回ってる。



梨花子さんは、稔兄ちゃんがこういう場に来ることを何も言わないのだろうか。

大人だから?
イイ女だから?

私が梨花子さんの立場だったら、やっぱりちょっとヘコむんだろうな。
子供だから、とかじゃなくて。


好きだから。


なんだか、自分がこの場にいることにも、稔兄ちゃんがここにいることにもバカらしくなってきたような、切なくなったような。
いっそ、お手洗いに立ったふりをして帰ってしまおうかな。

私以外のみんなで盛り上がってるし、問題はないだろう。


チラリ、見渡して荷物をもって席を立つ。
お店を出てから幹事の子にメールしておけば問題ないよね。

とりあえず、本当に、お手洗いに行こう。