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 (あっ、佐藤義清さまよ)


 (いつも素敵……)


 義清が任務に就く度に、御所の女房たちの熱い視線を受ける機会が増えた。


 (麗しいお姿にあの優れた歌の数々。私もあんな風に愛されてみたいわ)


 ……きっかけはだいぶ以前に、同僚の恋文を代筆したことだった。


 心とろかすような文章に、とどめを刺すのは甘い和歌。


 しかしいつもは無骨な男が、突如としてあでやかな和歌を詠んできたため、相手の女は不審に思った。


 しつこく問いただしたところ、男は同僚である佐藤義清に代作を頼んだことを白状した。


 そんなことを繰り返しているうちに、義清の和歌の腕前は御所でも噂になり始めた。


 やがて義清の名声は、待賢門院藤原璋子のそばに仕える女房・堀河(ほりかわ)の元にも届いた。


 自らもまた名高い歌人である堀河は、佐藤義清なる若者が、武士階級でありながら和歌に優れていることを知った。