ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛

私は朝比奈先生に向き直った。




「先生、行きましょう。

ご自宅に戻って、まずは新作の構想を練りましょう。

とことんお付き合いしますから」




すると朝比奈先生は、ふるふると首を横に振った。



まだゴネる気かこの男、と私が心底むかついたところで、先生は情けない表情で眉を下げる。




「ごめん、智恵子。

それは無理だよ。


だって、今うち、ガスも電気も止まってるんだ。

水道もそろそろ止まってるかも」



「………は?」




予想もしなかった答えに、私はしばらく呆然としてしまう。




「………え? 電気もガスも?

なんでですか?

お金がないんですか?


朝比奈先生、『幻月の庭』の印税で、もう一生楽に暮らせるくらいでしょう?」




思わず直接的な言い方をしてしまったと反省したけど、本当のことなんだから仕方がない。



あの作品は映画にもテレビドラマにもなったし、充分すぎるほどのお金が入ったはずなのに。


まさか、もう使い切っちゃったとか?

どんな豪遊の仕方したら、そんなことが可能なのよ?



でも、朝比奈先生は「ちがうちがう」と手を振った。