甘い囁きに、なぜか。 「雅、さん」 「さんはいらねぇんだけど」 溶かされてしまうんじゃないかと、思った。 きゅっと、唇を噛んで。 不思議と潤む瞳で彼を見上げると、微かに彼が瞳を揺らしたような気がした。 「み、やび」 発した声が、震えて。 思わずぎゅっと、目をつむる。 ……だけど。 ──あ、れ。 「あ、の?」 返事が返ってこなくて、瞼を持ち上げれば。