「うん、ダメだと思うよ」
後ろから聞こえたそんな声に、千夜が「ああああっ」と顔を隠すようにしゃがみこんだ。
……べつに、今さら照れる必要もねぇだろ。
「犯人は特定できてないんだけどさ、とりあえず今日参加してる全員をもう1回集めたよ。
女子だけで70人近くいるけど、どうやって特定するの?」
「心配することないだろ」
「一応、全員に何があったのかは言ってないよ」
「ああ、それなら助かる。
千夜、悪いがここで待っててくれるか?」
え?とファスナーを直したらしい千夜が、首をかしげる。
本当なら、千夜も連れていくべきなんだろうけどな。たぶん、それだと犯人が特定できない。
「ヒナをここに呼ぶ。
だから、お前は待機してろ。後で連絡する」
「……私がいなくても、特定できるの?」
「ちょっと大げさに言うだけだ」
「……? わかった、待ってるね」
ああ、と千夜の頭を撫でて、額に唇を落とす。
それから総会の会場にもどってヒナに向かうように告げると、集めた全員に向かって、俺は嘘を吐いた。
「千夜が閉じ込められたらしい。
あいつ、トラウマのせいで閉所恐怖症と暗所恐怖症なんだよ。いま過呼吸起こしてヒナに様子見させてる」
俺の言葉で、倉庫がざわつく。
男女でわかれているから、女の特定はしやすい。まあ、過呼吸にはなってねぇけど。閉じ込めた本人だって、過呼吸になったぐらいじゃ名乗り出ないだろうしな。



