「待たせて悪かったな。
──事前に伝えてあったとおり、矢昏 千夜をDECIDEの姫の地位につかせた」
シンとした空間に、雅の声だけが通る。
それに耳をかたむけると、雅は私に視線を落とし、ふたたび前を見据える。
「知ってるヤツもいると思うが、千夜はもともと碧の矢野の女だ。
──俺が、それを強奪した」
え、と小さく声が漏れる。
倉庫の中がざわついて、雅はそれに気をとめることなく「余計なことはするなよ」とだけ言って、話を終わらせた。
「お前よ~……
千夜のこと庇ったのはいいけど、それすると余計に千夜にプレッシャーがかかんじゃねぇの?女に厳しくチェックされるぞ」
「ヘマしたって問題ない。
千夜、もし万が一俺らが席を外しても、お前は自分の席に座ってろ。何かあっても俺はお前の居場所を把握できる」
私に用意された、DECIDEの幹部の中央、総長の隣の席。
壇上だから、たしかにここに座っていれば、倉庫内のどこからでも見える。
「まあ、基本そばにいるからな」
湊人が総会を仕切って、時期に倉庫の中はとても騒がしくなる。
グラスが全員に行き渡ると、雅の「乾杯」の声で総会が始まった。といっても、ご飯を食べて親睦を深めるためだけの会だったりする。
私のお披露目、という名目で集まっているらしいけど、実際には雅のさっきの紹介で終わってしまった。
だから、今は本当にただの親睦会。
「千夜、なにか食べるか?」
「ううん、いまはお腹すいてないから大丈夫だよ」
「ん。食べたくなったら言えよ?」
親睦会といっても、みんな忙しい。
ただ食べるだけじゃなくてDECIDEの幹部に挨拶するのも恒例行事なため、さっきから壇上にはひっきりなしに人が来る。



