「え、と……」
ちらっと、一緒にいた女の子たちに視線を向ける倉木さん。それから、「あの、」と言葉を続けた。
「にゅ、入学した時に……ごめんなさい、ひとめぼれしたんです。
で、でも、それから3年間ずっと同じクラスで、あんまり話すこともできなかったけど、たまに話したときは優しくしてくれて、困った時も助けてくれて、」
あまりにも恥ずかしいのか、彼女の瞳に涙が浮かぶ。そんな倉木さんの頭を、ぽんぽんと撫でてあげた。
「ひとめぼれ、だったけど……
いまは、誰よりも湊人くんのことが好きです」
はら、と彼女の瞳から、耐えきれずに涙がこぼれ落ちる。それを指で拭ってあげてから、俺は彼女に向かって微笑んだ。
「俺と付き合ってくれますか?」
微かに、彼女が目を見張る。
それから、せっかく拭ってあげたというのに、何度も涙をほろほろと零して、彼女は頷いた。
「ふ。うん、じゃあ今日はもういい加減怒られるから帰ろうか。
ちょっと待ってて。ノートとってくる」
教室に入って、机からノートを手に取ると、廊下に出た。どうやら、倉木さんは泣きやんだらしい。
「マジでか……お前彼女いらないって」
「俺はひとめぼれとか容姿だけ目当ての女子が嫌いなだけだよ。
純粋に好きになってくれた子を拒絶したりはしないよ」
だって、俺のことをちゃんと見てくれていたことが嬉しかったから。
彼女と付き合うのも悪くないんじゃないかって、そう思っただけ。



