「まぁ、奈津美もちゃんと考えときなよ。
あとで後悔しても意味ないんだからね」
そこで、チャイムが鳴って、はっと我に返る。俺らがいるのは教室の前。しかも俺らは3組で、学年で6クラスあるうちの廊下ど真ん中。
「み、なとくん……と、ユキくん……?」
廊下の端まで行って隠れることも出来ず、下校のチャイムが鳴ったからと出てきた彼女たちに、あっさり見つかってしまった。
顔がひきつってるのがわかる。倉木さんはあからさまに俺の顔を見れないとでもいうように、俯いていた。
「あ、はは、ごめんごめん。
や、別に盗み聞きしたかったわけじゃないんだけどさー?ちょっと入りづらくて、うん、まぁ結果聞いちゃったわけなんだけど」
ユキがなんとか気まずい空気を断ち切ろうとしてくれるけれど、そんなんじゃ空気は明るくならなくて。
「あ、あの!湊人くん!
奈津美ね、1年の時から湊人くんのことずっと好きだったの!本人じゃないのに言うのもあれだけど、ひそかに片思いしてて、」
これがチャンスだとでも言いたげに、ずっと倉木さんと話していた子が俺に告げる。……ずっと、か。
「倉木さん」
彼女の前で立ち止まって、「顔あげて?」と優しく声をかける。そうすれば、彼女はゆっくりと視線をあげてくれた。
「俺のこと、好きでいてくれたの?」
こくこくと、赤い顔で頷く彼女に、小さく笑みが漏れる。
「じゃあ、俺のどこを好きになってくれたの?」



